「だけど、リュート……」 「……お嬢様」 と、彼が白い手袋をはめた手で、私の口をスッと覆う。 「……それ以上は、もう何も……」 しなやかな掌を外すと、 「……ご無礼をして、すいませんでした。……舞踏会へのご用意を、どうぞお進めになられてください」 そう執事然とした口ぶりで話して、何事もなかったかのように私に背を向けた。 「……なぜ、言えないのよ……」 彼の後ろ姿に、唇を噛んで呟く。