ーー一晩寝ずに様々なことを考えて、私は彼の元を訪れることを心に決めた。

……もし今を逃したら、いつまたそういう機会が訪れるのかもわからないと思ったら、会いに行かずにはいられなかった。

彼の家へ行くことを隠して、少し早めに帰ることを告げると、母は、

「そんなに急いで帰らずともいいではないですか」

と、引き止めた。

懐かしい家にいたい気持ちもあったけれど、それ以上に彼に会いたい気持ちがあった。

「……ごめんなさい、お母様。また来ますので」

抱き合って別れを惜しんで、家を後にしたーー。