「あなたが軽率だから、目下の者などに付け入られるのです」

「……違うわ…リュートは……」

かつて、彼自身の口から発せられた『軽率な思いなどは、口に出してはなりません』という台詞がよぎった。

リュートは、自ら誘惑をしたことなどなかったのに……なのに、私のせいで失職を言い渡されて……。

「……そんなことより、侯爵様との生活でも聞かせてちょうだい」

母が話すのを半ば呆然と聞き流しながら、

まさか彼に会うこともできず、ましてそれがキースが引き起こしたことだったなんてと、苦い思いが胸をにわかに込み上げた……。