「リュートですか?」

と、母が僅かに眉間に皺を寄せる。

「彼には、暇を出しました」

「え…どうして?」

思いもかけない返答に、驚いて聞き返すと、

「……侯爵様から、聞かされたのですよ。リュートが、あなたを誘惑しているということを」

母が、嫌悪感を露わに言うのに、

「……誘惑って、違うわ……それにキースが、そんなことを話したっていうの……?」

今の今までキースを信じていた気持ちが、 目の前でガラガラと音を立てて崩れ落ちていくのを感じた。

「……お黙りなさい。侯爵様は、進言をしてくれたのですよ」

母はさもキースが正しいようにも話して、

「主に手を出す執事など、辞めさせて当然です」

と、私の言い分など全く聞く気もない素振りで、そう言い切った。