「……誓いのキスを」

神父様の言葉に顔を上げると、キースの唇が近づいた。

唇が合わさった瞬間に、婚姻を告げる祝福の鐘が鳴らされるのを、まるで他人事のように聴きながら、

今、もしここに、リュートが私を奪いに来てくれたなら、迷わずその胸に飛び込んでいくのにと……、

そう思って挙式の行われている庭園を見回すけれど、無論そこに彼の姿があるはずもなかった……。

代わりに母と目が合って、「良かったわね」と言わんばかりに、一際大きい拍手を送られた。

無理に笑顔を作って、母へと返して、

もう自分は本当に好きな人の元には、還ることはできないのだと悟った……。