「…ねぇ、リュート……」
鏡の奥の彼に、呼びかけてみる。
「……あなたと、もし結ばれていたら、どうなっていたのかしらね…」
もう何度も目の当たりにした、苦悶に歪んだ悲しげな彼の顔が浮かんだ。
「あなたが私と逃げてくれたら、どこへだって付いて行ったのに……」
駆け落ちをすることなどはできないと、拒まれた時のことを思い出す。
「……あなたは、それでは私を幸せにはできないと言ったけれど、」
届きはしない鏡の中の彼に手を伸ばして、
「私は、その方が幸せだったわ……あなたと、共にいられるのなら……」
冷たく温もりも伝わらない、鏡面に語りかけた……。


