今のあたしを見たら、クロは何と言うだろう。
それ以前に、行為の間中クロのことばかり考えていて、まるで陽平の存在が消えていた自分自身が、心底嫌になった。
これが裏切り者に課せられた罰だと言うならば、あたしはそれを受け入れることしか出来ないのだろうけど。
「石部サンってさ、何であたしに優しいの?」
「優しいんじゃなくて、俺のはただの偽善者だよ。
みんなに優しくして、優越感に浸ってるだけ。」
“だから、気にしなくて良いよ”と、そう彼は付け加えた。
難しいことを言う人だなとは思ったのだが、これがこの人の裏の顔だろうか。
そう言えばあたしは、石部サンの貼り付けた笑顔以外、見たことがないなと、そんなことを思ってしまう。
「じゃあ、ホントは酷い人なんだ?」
「そうだと思うよ。」
「女泣かせだね。」
「それ、よく言われる。
だから俺には、こんな関係が楽なんだ。」
そんな会話を交わしているうちに、彼はすっかりスーツ姿に戻ってしまい、ミントガム並に清涼感が溢れる印象だと思わされてしまうのだが。
いつも通りに数枚の諭吉を枕元に置き、“また連絡するよ”と、そんな言葉と共に彼は、部屋を出て行った。
独りっきりになったベッドの上で、今しがた置かれたばかりのお金を握り締め、これで良いんだと、そう言い聞かせた。
だけども気だるさと共に訪れるのは、ひどい喪失感と空虚感で、まるで心にポッカリと穴が開いてしまったようだと思ってしまう。
もしもクロを選んでいたら、今頃どうなっていただろうかと、そんなことが脳裏をかすめたのだが、馬鹿みたいだと思った。
後悔なんて、してないつもりだったのに。
それ以前に、行為の間中クロのことばかり考えていて、まるで陽平の存在が消えていた自分自身が、心底嫌になった。
これが裏切り者に課せられた罰だと言うならば、あたしはそれを受け入れることしか出来ないのだろうけど。
「石部サンってさ、何であたしに優しいの?」
「優しいんじゃなくて、俺のはただの偽善者だよ。
みんなに優しくして、優越感に浸ってるだけ。」
“だから、気にしなくて良いよ”と、そう彼は付け加えた。
難しいことを言う人だなとは思ったのだが、これがこの人の裏の顔だろうか。
そう言えばあたしは、石部サンの貼り付けた笑顔以外、見たことがないなと、そんなことを思ってしまう。
「じゃあ、ホントは酷い人なんだ?」
「そうだと思うよ。」
「女泣かせだね。」
「それ、よく言われる。
だから俺には、こんな関係が楽なんだ。」
そんな会話を交わしているうちに、彼はすっかりスーツ姿に戻ってしまい、ミントガム並に清涼感が溢れる印象だと思わされてしまうのだが。
いつも通りに数枚の諭吉を枕元に置き、“また連絡するよ”と、そんな言葉と共に彼は、部屋を出て行った。
独りっきりになったベッドの上で、今しがた置かれたばかりのお金を握り締め、これで良いんだと、そう言い聞かせた。
だけども気だるさと共に訪れるのは、ひどい喪失感と空虚感で、まるで心にポッカリと穴が開いてしまったようだと思ってしまう。
もしもクロを選んでいたら、今頃どうなっていただろうかと、そんなことが脳裏をかすめたのだが、馬鹿みたいだと思った。
後悔なんて、してないつもりだったのに。


