向日葵

「アンタみたいな軽い男は信用出来ない、ってことなんだけど。」


『あっそ。
じゃあ俺、巡回通り真っ直ぐ行ったとこにある居酒屋に居るから、気が向いたらアンタも来れば?』


明らかに電話口の向こうは面倒くさそうな色に満ちていて、そうそっけなく言われ、そして勝手に電話が切れてしまう。


鳴り響くのは通話終了を告げる規則的な機械音で、思い出したようにあたしは、あの男への怒りが再燃したのは言うまでもない。


言うまでもないのだが、これからの予定はと言うと、そんなものがあるわけもないし。


おまけにお腹が空いていて、どうしたものかと思っていたのもまた、現実なわけで。


困り果てて立ち尽くしていたあたしに、ドンッと夕刻の人並が、邪魔だと言わんばかりにぶつかってきた。


ため息を混じらせてみれば、街の色は太陽の光を失い、人工的なネオンの色が煌びやかに一帯を染め始める。


まだ少し夜風は冷たくて、こんな街に飲み込まれそうな感覚さえも覚えた。



「…仕方がない、か。」


仕方がないんだと、そう言い聞かせながらあたしは、止めていた足を再び踏み出した。


向かう先は、あの男が待つ居酒屋。


利用出来るものは利用すれば良いのだし、今更何をされたって何とも思わない。


だってあたしは、とっくの昔に汚れ切っているんだから。


いつもいつも、頭の中で鳴り響くのは、男女の言い争う声と、そして食器の割れる音。


そんなものに苦虫を噛み潰しながらあたしは、駅に向かう人並に逆行した。