「この女は、俺が拾ったんだ。
だから、何しようと俺の勝手じゃね?」


「陽平、やめて!
あたしが悪かったから!!」


再びクロは眉を寄せたのだが、陽平が全てを口にすることが怖くてあたしは、急ぎ彼を制止した。


キレたこの人が危ないという噂は幾度となく耳にしていたのだが、本当に今の陽平の瞳は、瞳孔さえも開いて見える。


一体どれくらいの睨み合いだっただろう、先に引いたのは陽平の方で、チッとあからさまに舌打ちを混じらせ、彼は強引にあたしの腕を引いた。



「夏希!」


そう、クロがあたしを呼ぶ声は静かすぎる通りへと消え、痛みさえも混じる手首の所為で、振り返ることすらも叶わなかった。


角を曲がり、そのまま引きずられるようしてアパートの階段を昇り、バンッと強引に開けたドアの音が響く。


玄関で突き飛ばされ、その場へと倒れ込めば、顔をかすめるようにゴトッとコーラのペットボトルの袋が目の前に降って来て。



「あの男ともヤってんの?」


「…何、言って…」


「答えろよ!」


「―――ッ!」


低く声を荒げた陽平は、あたしの上へと覆い被さり、逃げることなんて許さないとでも言いたげに、容易く手首が掴まれた。


ただ、過去の記憶がフラッシュバックして体が動かなくなり、それを抵抗することを諦めたと受け取ったのか陽平は、あたしの服の中へと触手を侵入させて。



「誰のおかげで今があんのか考えてみろよ。」


「…痛っ、やめっ…」


「お前は俺の道具なんだから、俺とだけヤってりゃ良いんだよ!」


「―――ァ!!」


その瞬間、怒りに満ちた顔のままに、昂ぶるモノに貫かれた。


霞んでいく意識の中で、あたしの携帯が鳴っているようにも聞こえたのだけれど、手を伸ばすことも叶わないまま。


痛くて、怖くて、涙ばかりが溢れてしまう。