一体どれくらいの時間が経過しただろう、そのまま立たされ、そして指の先を絡めるようにして手を引かれ、車まできびすを返した。


やっぱりクロは前を歩いていて、その表情なんて読み取れないまま。



「ねぇ、クロ。」


「ん?」


「前にさぁ。
女に困ってない、って言ってたじゃん?」


「うん、言ったね。」


「じゃあ、何であたしに関わるの?」


「わかんねぇけど。
気になるんだし、しょうがねぇじゃん。」


じゃああたし達は、両想いなのかな、なんてことが頭をよぎったが、でも、そんなことは言えないまま。


絡まったままの指先はあったかくて、このまま時間が止まれば良いのになんて、らしくないことを思ってしまうのだけど。


クロがこちらを向くことはなくて、あたしの心臓の音は、寄せては返す波音が消し去ってくれた。



車まで辿り着けば、二人砂まみれだということにやっと気付き、思わず笑ってしまった。


おまけに髪の毛にまで潮の香りがこびり付き、幾分ベタついている感は拭えない。



「お前、この貸しは高くつくぞ?」


「…クリーニング代ってこと?」


「馬鹿。」


あたしの言葉を鼻で笑ってクロは、そのまま車に乗り込んでしまう。


意味がわからなくてため息を混じらせ、仕方なく同じようにあたしも車に乗り込むと、それは夜の海を背に走り出した。