向日葵

恐る恐る電話口に耳を傾けてみるも、あたしの名前を呼ぶ表情は、当たり前だが読み取れない。


結局そのまま沈黙しか返せなくて、手首はまるで主張するように痛みを放ち続けたまま。


あれから五日が過ぎたはずなのに、何ひとつあたしの中で過去のことになってはくれないのだから、嫌になる。



「ねぇ。」


『ん?』


「あたしのこと、買わない?」


クロに対する感情が何なのかは未だにわからないし、忘れる術さえ持てずに居る。


ならば、この男にヤられれば、簡単に嫌いになれるんじゃないか、って。


そう思いながら煙を吐き出すと、それは漂うようにして部屋に溶けた。



『何やっても良いの?』


「良いよ。」


少しの沈黙の後、交わしたのはたった一言だったけど。


“他の男と違う”と言っていたくせに、男なんていざ欲望を目の前にすると、結局みんな同じということだろう。


結局はクロだって一緒なんだと、そう思うと、自嘲気味に笑うことしか出来なかった。


それから時間と場所だけを告げられ、すぐに電話は切れてしまった。


携帯をベッドの上へと放り投げ、短くなった煙草を消せば、鏡に映ったのはひどく冴えない顔をした女の姿。


こんな女なんか本気で消えてなくなれば良いのにと、自分自身の姿を見つめながら、本気でそんなことを思ってしまう。


醜くて、汚いばかりだ。