向日葵

『…何でっ、こんなっ…!』


『別に、理由なんてないよ。
強いて言うなら、キミのお母さんが帰って来るまで暇だったから、かな。』


『…嫌っ…!』


それでも必死で抵抗していたのに、ガシッと大きな手によって掴まれたのはあたしの首元で、“暴れるなよ”ともう一度、低い声でそう言われた。


本気で殺されると思うと、その瞬間に体は硬直し、ニヤリと笑った彼はあたしを貫いた。


梶原が動く度、中が擦れる度にあたしは、早く終わってくれることだけを祈りながら、顔を覆って声を殺し続けた。



『今更純情ぶるなよ。
どうせ初めてじゃないんだろ?』


鼻息荒く梶原は、あたしの耳元へと汚い吐息を混じらせる。


そこからの記憶は、断片的なものしか覚えてはいない。






逃げる術さえなく、誰かに助けを求めることさえ叶わなかった、非力なあたし。


ただの欲望の対象物で、暇だったからとか、初めてじゃないなら良いとか、あの男にとってはその程度でしかなかったのだ。


気付いた時には梶原は消えていたし、部屋はいつの間にやら薄墨の世界へと変わっていた。


視線を落とした自らの体には無数の擦り傷やアザが残されており、下腹部に鈍い痛みを覚えてしまう自分には、嫌悪感を抱かずにはいられない。


姿はないはずなのに、記憶の中の梶原が、そんなあたしをいつまでも嘲笑っている気がして、体には未だ、あの指先の記憶が残ったまま。


いつまで経っても母親は帰って来なかったけど、それでもこんな姿を見られるよりは、ずっとマシだと思っていた。


実家を出たのは、それからだった。