ミシッとよく弾むベッドのスプリングの音が小さく消え、薄目がちに見たお客の額には、もう汗が滲んでいた。
鼻息が荒くて、汚らしくて、本当に最悪だとしか思えない。
「夏希ちゃん、気持ち良い?」
「…アッ…」
気持ちが良いわけもないのにわざとらしく甘い声を漏らせば、男は嬉しそうにあたしの肌に指先を滑らせる。
この人の名前は何だっけなと、そう記憶の糸を辿っていると、シュッと布の擦れる音がし、彼はネクタイを外した。
外して、そして“縛って良い?”などと口にしやがる始末。
「…良いよ。」
聞こえないようにため息を混じらせながらそう返せば、見えたのは薄笑いで、それを最後にあたしの視界は閉ざされた。
真っ暗な世界の中で思い出すのは、過去の記憶。
意志とは別に呼吸が荒くなるあたしを感じているとでも思ったのかお客は、あたしの中に深く自身を沈めた。
初めて体を売った日から、一年半。
だけどもそのずっと前から、あたしの体は汚れ切っていたのだ。
両親はずっと不仲で、あたしの誕生日の少し前、お父さんは出ていった。
その次の日には、お母さんの交際相手の男が、当たり前な顔で我が家に上がり込んで来たっけ。
『ハジメマシテ、夏希ちゃん。』
それが、“梶原”の第一声だった。
もちろんあたしが言葉を返すことはなかったし、元々家に居ることさえ少なかったので、勝手にしてくれれば良いとさえ思っていた。
それが、夏の出来事だったと記憶している。
鼻息が荒くて、汚らしくて、本当に最悪だとしか思えない。
「夏希ちゃん、気持ち良い?」
「…アッ…」
気持ちが良いわけもないのにわざとらしく甘い声を漏らせば、男は嬉しそうにあたしの肌に指先を滑らせる。
この人の名前は何だっけなと、そう記憶の糸を辿っていると、シュッと布の擦れる音がし、彼はネクタイを外した。
外して、そして“縛って良い?”などと口にしやがる始末。
「…良いよ。」
聞こえないようにため息を混じらせながらそう返せば、見えたのは薄笑いで、それを最後にあたしの視界は閉ざされた。
真っ暗な世界の中で思い出すのは、過去の記憶。
意志とは別に呼吸が荒くなるあたしを感じているとでも思ったのかお客は、あたしの中に深く自身を沈めた。
初めて体を売った日から、一年半。
だけどもそのずっと前から、あたしの体は汚れ切っていたのだ。
両親はずっと不仲で、あたしの誕生日の少し前、お父さんは出ていった。
その次の日には、お母さんの交際相手の男が、当たり前な顔で我が家に上がり込んで来たっけ。
『ハジメマシテ、夏希ちゃん。』
それが、“梶原”の第一声だった。
もちろんあたしが言葉を返すことはなかったし、元々家に居ることさえ少なかったので、勝手にしてくれれば良いとさえ思っていた。
それが、夏の出来事だったと記憶している。


