口調は少し怒ったようで、向けられた視線が痛くて仕方がないのだが、それもそうだろうと思ってしまう。


だってこの二週間、あたしはクロを避け続けていたのだから。



「いや、俺と夏希、中学の頃の同級なんすよ。」


「へぇ。」


スカしたような顔のままにクロの視線は流れるようにこちらに移り、あたしは小さく唇を噛み締めてしまう。


その瞳は、まるで無言で責めているようにも感じられるのだから。



「久しぶり、って言うべきかな。
つか、夏希って偽名じゃなかったんだな。」


「だったら何?」


睨まれ、そして睨み返した後、再び沈黙が訪れた。


さすがの智也も空気の悪さを感じたのだろう、“二人ってどういう関係なんす?”と、そう聞いてきたのだが、あたし達が何かを言うことはないまま。


ため息混じりに煙草を消しあたしは、視線を逸らすようにして立ち上がった。



「また逃げんの?」


「―――ッ!」


「ちょっと来いよ。」


そう言われた瞬間にあたしの腕が掴まれ、急いで抵抗の言葉を並べてみたものの、それを聞き入れてもらえることはなかった。


そして半分引きずられるようにして店の外まで連れ出され、驚いた顔の智也が焦ったように追いかけてきて。



「龍司さん!」