向日葵

「明日朝一で必要なもんがあるんだけど。
それ、俺が持ってんだよね。」


「で?」


「先輩がわざわざ取りに来てくれるって。」


「それって、あたし居ても良いの?」


思わずそう聞いてしまったあたしに、智也は瞬間、思いついたようにニィッと口元を緩めて。



「そうだ!
折角だし、お前に紹介してやるよ!」


「……は?」


「いや、その人マジで良い人だし、めちゃくちゃ格好良いし!
男の俺でも惚れちゃいそうだもん!」


コイツは藪から棒に、一体何を言い出しているのやら。


ひどく眩暈を覚えてこめかみを押さえてしまったあたしに、だけども智也は、嬉々としてその人のことを話し出してた。


もちろん、適当に相槌を打ちつつも、話なんて右から左に流れていく。


あたしは恋愛なんかする気はないと、この前言ったばかりじゃないか。



「だから、龍司さんは最高なんだよ!」


「あっそ。」


「つか、興味無し?」


「ないね。」


ツンとしてカルアミルクを流し込めば、智也は明らかにつまんなそうな顔へと変わってしまう始末。


相変わらずの居酒屋は、ガヤガヤとうるさいばかりで、本気で耳触りだと感じてしまうのだが。



「俺、思うんだけどさ。
夏希もいい加減、過去に縛られてないで前向いて進めば?」


ため息を混じらせた智也の言葉に、あたしは思わず唇を噛み締めてしまう。


グラスを伝う水滴は、まるであたしが昔流した涙のようで。