いつの間にか智也は車の免許まで取っていて、昔の無免許の姿を思い出し、思わず笑ってしまったけど。


帰りは智也運転の車に乗り込み、陽平の家の近くまで送ってもらった。








「ありがとね。
電車代浮いてラッキーだったし。」


「感謝しろよな？」


「ははっ、してるって。
じゃあ、またいつでも誘ってよね。」


「了解。
お前もあんま無茶すんなよ。」


そんな会話を交わし、車を降りた。


手を振れば彼は、パーンと抜けるような音のホーンを鳴らし、車を走らせて。


少し冷たい夜風を感じながらあたしは、陽平の家へと急いだ。


開いた携帯には、クロからの不在着信が表示されていたのだが、あたしが掛け直すことはない。


あの日以来、アイツの着信を無視し続けているのだけれど、だけども彼は、未だ諦めていない様子で。


もしかして、本気だったのかな、なんて思ったのだが、あたしにはもう関係のないことだ。


そんなことにため息を混じらせながらアパートの階段を昇ってみれば、部屋の電気は灯されてはおらず、陽平の不在を教えてくれた。


珍しいなと、そう思ったのだけれど、大して気にも留めることなくあたしは、相鍵を取り出し、扉を開けた。



「ただいま。」


誰も居なくてもそう呟くことは癖のようになっていて、やっぱりあたしの居場所はここしかないのだと、そう思わされてしまう。


そのまま重たい体をソファーに投げ、眠りに堕ちた。