声が震えて、上手く喋れていたのかもわからないけど。


それでもクロが何かを言うことはなく、沈黙に耐えきれなくなってあたしは、逃げるように足を踏み出した、その刹那。



「…すっげぇ会いたかった…」


そんな言葉と共に、気付けばクロに引き寄せられるように抱き締められていて。


何が起こったのかはわからなかったけど、でも、ひどく懐かしい香りに抵抗することを忘れていた。


代わりに涙が溢れ、そんなあたしに彼は、腕の力を強めるのみ。



「…会いたくて会いたくて堪んなくて…マジ死にそうだった…」


まるで吐き出すような台詞が耳元に落ちた時、少し震える指の先で彼の服の裾を掴んでみれば、愛しさばかりが溢れ出す。


折角忘れようと努力していたはずなのに、なのにこんな再会による一言で、力が抜けていくんだ。


上手く喋れなくて、ただすがるように彼の胸に顔をうずめ、その体へと腕を回せば、少し痩せているような気がした。



「…あたしまだ、強くなれてない…」


「俺も。」


「…会うとか思わなかったし、全然忘れられないしっ…」


「俺もだ。」


驚いたように顔を上げてみれば、不意を突いたように唇が触れた。


一度離れたそれは再び落ちてきて、今度は求めるようにあたしの奥深くを掻き回して。


何にも考えられなくて、そんなあたしの涙を彼は、そっと指の先で拭ってくれる。



「…あたし、アンタのことばっか考えててっ…」


「それは、最高の告白だな。」


「……どうしてくれんのよ…」


「責任取ってやるよ、心配しなくても。」


フッと口元を緩めた彼はまたあたしに唇に触れ、本気で全部溶けてしまいそうだと思った。


離れてみて、こんなにも求めているのだと気付かされたし、再会は笑顔なんかじゃなかったけど、でも、“愛してる”って、そんな言葉が耳に触れた。