真っ暗な公園で優しい風が吹き抜けて、あたしの不安も何もかもを持ち去った。


人差し指同士だけを絡め、ちょっとだけ引かれる感じは嫌いじゃなくて、何だか少しだけ、くすぐったくも感じてしまう。



「ねぇ。」


「ん?」


「もう隠してることない?」


「…あー…」


「あるの?」


「言っても怒らない?」


「…怒らない、けど。」


「ごめんね、お前のチョコ食っちゃった。」


そんなこと聞いてるんじゃないのにな、と。


そう思ったのだがため息だけを混じらせると、“やっぱ怒った”ってクロは、そうやって笑っていて。


結局また、上手くはぐらかされてしまったようで、振り返ったようにあたしを見る彼に、何となく口を尖らせた。



「それよりお前、その傘どうしたの?」


「言っても怒らない?」


「いや、どうだろうね。」


「じゃあ言わない。」


ツンとして言葉を返すと、“怒らせるような傘なのかよ”と彼は、呆れ半分にそう呟いて。


たかが使い古した傘だけど、それでもあたしにとっては大切なもので、それを握り締め、クロの車へと乗り込んだ。


雨上がりの匂いが鼻をさし、泣き終えた空模様はまるであたしの心の中のようだ。


他人なんて信じてなかったけど、でも、クロのことをもう一度信じてみるのも悪くないんじゃないかなと、図らずも、そんなことを思わされた。