そのまま車に乗り込んでも、クロは言葉を紡ぐことはなく、煙草を咥えてしまったきり。


煙だけを吐き出しながら車を走らせる様に、いい加減あたしは眉を寄せたのだが。


重たい沈黙ばかりが続く中で、気付けばそれは、彼のマンションの駐車場に当然のようにして到着してしまい、無言のままのクロは、ひとり勝手に車を降りた。


ため息しか出ず、仕方なくその後姿を追ってみれば、エレベーターが到着し、二人それへと乗り込むのだけれど。


相変わらず、何も話さないまま。








「何考えてんの?」


ソファーに深々と腰を降ろし、それでも煙草を咥えたままのクロに痺れを切らし、先に口を開いたのはあたしの方だった。


まるで、その時やっとあたしの存在に気付いたような瞳は、弾かれたようにこちらを向いて。



「…あー…」


「また誤魔化すの?」


「―――ッ!」


視線を泳がせた瞳を真っ直ぐに見据えると、図星だったと言わんばかりの瞳が逸らされて、思わずあたしは唇を噛み締めてしまう。


クロにはクロの生活があって、そして過去があるから今があるのだということは、十分にわかっているけど。


だけどもあたしの前でそんな顔をする以上、何も言わないわけにはいかないから。



「ごめん、出て行く。」


「待って!」


きびすを返したあたしに、刹那、彼は制止するように手を伸ばしてきたのだが。


無理やりに掴まれた腕を振り払おうとすれば、ドンッと鈍い音がして、次の瞬間にはバランスが崩れたようにあたしは、床へと押し倒されたような状態になって。



「…触らないでっ…」