それからドライブをした後、食事をしに入ったのは、創作和食のお店。


相変わらず小洒落たところを知っているなと、そんなことを思ってしまうのだが、相変わらずそんな雰囲気が似合っているのだから、何だかムカつく。


だけども今日一日、まるでデートのようだったなと、そう思えば、クロとこんな風にゆっくり過ごしたことなんて今までなかったなと考えてしまう。



「あたし、初めてかも。」


「…何が?」


「何もかも。」


「意味わかんねぇし。
けど、初めてなら赤飯でも頼んどく?」


「…あたし、食べたことない。」


「へぇ、一緒じゃん。
じゃあ、余計に頼んどけば?」


「いや、そんなに食べられないし。」


「そこは同感。」


何だか噛み合っているのかいないのかの会話を繰り返しながら視線を移した窓の外は、いつの間にか夜の帳が下りていて、どうやらそろそろ一日の幕が降りる時間が近いようだ。


相変わらず彼は、纏った長袖のシャツで過去を隠していて、明るいところ好んで歩きたがる。



「何?」


「元気?」


「ないように見える?」


あるように見えるから、少し心配なのだが。


どこからどこまでがクロの強がりな部分なのかは、あたしにはわからないから。


先ほどの電話のことと言い、本当は気になることだらけなのに、聞くことも出来ないままに時間ばかりが過ぎてゆく。



「じゃあ、元気ないって言ったら、慰めてくれる?」