居場所がなくて、ただあたしは、夜の街を歩き続けた。


歩き続けてれば朝が来ると思ったのに、なのに時計の針はちっとも進むことはなくて。


おまけに、この街から出てもいないのだから。


まぁ、こんなペースで歩き続けたら、朝になってもきっと、この街から出ることは叶わないのだろうけど。


とっくに終電は終わってるし、どこだかわからないようなこんな場所じゃ、タクシーだって拾えない。


最低限の着替えと、そして現金3万円の入ったバックだけが頼りで、まるで実家を出たあの日と同じなのだから、嫌になる。


体の痛みは限界で、満身創痍とは、まさにこのことだろう。


そんなところまであの日と酷似していて、少しの震える吐息を吐き出すと、その場で足が止まってしまった。







おぼろげな春月だけに照らされた、薄暗い通り。


見上げればそれは、次第に歪んで映り出し、自分自身が泣いているのだと、今更ながらにそう思わされた。


智也に電話を掛けようとも思ったが、やはりここがどこだかわからない以上、助けを求めることも出来なくて。


近くにコンビニらしきものも見当たらなければ、駅の場所も定かではない。


八方塞のままで、ただ時間だけが過ぎゆき、再び足を進めることは困難となるばかり。


迷子の子供みたいで、弱さばかりがあたしを包み、背中を預ける壁が、ひどく冷たいと感じた刹那。



「…夏希?」