向日葵

「…俺の名前、聞かないの?」


「聞いてどうすんの?
あたし別に、アンタの名前なんか聞いたって覚えられないし。」


「…冷たいねぇ。」


ため息交じりに吐き出された言葉に、あたしが何かを返すことない。


向かい合っていても関わりたくないと未だに思うし、それに本当に覚える気さえないのだから、仕方がないじゃないか。



「なぁ、夏希。」


「呼び捨てしないで。」


「お前だって呼び捨てじゃん。」


「あたしは良いの。」


「自己中だな。」


「アンタに言われたくないから。」


そんな小さな言い争いに、先に引いたのは向かいのクロの方だった。


昼間はテンションが高そうにも見えたけど、再び取り出した煙草に火をつける横顔は、キリッとしていて、何だかとても格好良くも見えるのだが。


見えるのだが、あたしには別に関係ないし。



「何?
もしかして、俺に惚れちゃった?」


「アンタ、ホントにバッカじゃない?
アンタこそ、あたしに惚れたんじゃないの?」


「ははっ、だったらどうする?」


「―――ッ!」


驚いて目を見開けば、明らかにあたしの反応を楽しむように持ち上げられた唇に、遊ばれてるのだと思った。


こんなヤツを、ちょっとだけだが本気で格好良いかもと思った自分の馬鹿さ加減に、いい加減呆れ果てることしか出来なくて。