僕は夏の半分をこのリゾート地で過ごす。
ここでは、いつも決まって長期滞在型のコンドミニアムを利用する。
ホテルよりも落ち着けるという理由もそうではあるが、ここから見下せるノースショアの美しさは夏に生活する為の僕の一部でもある。
しかし今年は、そんな無理もきかない。
仕事の関係で予定がシーズンへと流れ込み、都心部のホテルでさえ予約は困難かと思われたが偶然にもこの一室を手に入れる事が出来た。
実はその理由が手紙の彼女と関係がある。

一週間前、空港のサービスカウンターでホテルのキャンセル待ちを申し込んでいた僕の隣でツアーの客らしい女性が受付を済ませると、近くの係員を呼び止めた。
彼女はかなり心配そうな顔で、ロビーの係員と流暢な英語で話している。
コンコースの中は雑然としていたが、彼女が大きな声で話をしていたので自然と会話が耳へと入ってきたが、僕は気にも止めてはなかった。
それよりも、ステイ先のキャンセル待ちが取れなかった場合の事を考えていた為、会話の内容を把握する余裕が無かったと言った方が正しいのかもしれない。
僕が何気なく彼女の方を振り向くと、以前から僕の事を知っているかの様な笑顔で、近付いてきた。

「あの…よろしかったら、私の部屋を使いませんか?」

「君の部屋…ですか?」

「あっ、いえ…宿泊日数が残ったホテルの事なんですが…」