ガラガラ

「はいー席についてー。」


もう…この声も聞けなくなる。

聞けなくなるかもしれないじゃなくて、

聞けなくなる。

聞けなくなってしまう。

そう考えたら、涙が溢れた。

だけど、必死にこらえながら席に戻った。


「えー突然で申し訳ないんですけど、先程も言った通り、先生は坂高を退職いたします。」

夢ならいいのに。

誰もがそう思った。

先生、これ、なにかのドッキリでしょ?

だから早くネタばらししてよ。

そう思っても、先生がネタばらしをすることは無かった。

「坂高を退職して私は、青森の高校の方へ行きます。」


え…?

青森…?


青森って…あの…青森?…



東京から青森って…何考えてるの?


遠すぎだよ。ねえ、先生。

てっきり、坂高からいなくなっても、東京にはいるのだと思っていた。

そう信じていたのに、都外だなんて…。

そう簡単に会える距離ではない。

教室もざわめいている。

私は、遠くの席の紗弥と顔を見合わせた。

お互い、今にも泣きそうなのは言うまでもない。