大学に入学して1ヶ月は経った頃。


僕は未だにこの生活に慣れていなかった。

周りより飛び抜けたこの頭脳のせいか、遠巻きに見られるばかりだ。

こんなことなら、入学するんじゃなかった。

今更後悔しても遅いけど。


家までの道のりをとぼとぼと歩く。

上を見上げると空には綺麗な月や星が浮かんでいて、こんな僕を嘲笑っているようだった。

あぁ、昔に戻れたら良いのに。

現実逃避をしてしまうほど、疲れきっていた。


僕は、上を見上げたままだったせいで、前から来る通行人に気付かなかった。

おかげで見事、その通行人とぶつかってしまった。

「すいません、大丈夫ですか?」

倒れてしまった相手に手を貸すように差し伸べる。

「有難う御座います」

暗いせいでよく見えないが、声からして女の人のようだ。

そして、僕の手を掴んだため立てるように引き上げる。

しっかり立ち上がったのを確認して、声を掛けた。

「それじゃあ、すみませんでした。」

僕はそのまま立ち去ろうとした。

「待って下さい」

その人に引き止められるまでは。