恋愛小説やら、コミックとかドラマでは定番の、
二枚目なセリフだが。
状況とそれを吐く人物像が情けなさすぎて、
「全然、胸キュンじゃない」
「おい、一応、脚押さえとけ」
岩佐の指示で後に居た二人が前にかがむ。
アタシは腹筋で脚を引き勢いをつけ、
一人はこめかみと、
もう一人はアゴを軽く蹴る。
「がはッ!」「ぐがっっ!」
二人が倒れるのを見て、
アタシの肩を支えている二人が慌てた。
「チッ」
岩佐が舌打ちして、アタシに迫り、
えり首に手をかける。
アタシの蹴りが岩佐の腹に入る。
襟からボタンがはじけ飛び、
岩佐が倒れ、
動揺の隙をつき、束縛をのがれ……、
地面に手を付き振り向く。
ブロロロロロロロロオオオオ………。
遠くから、スクーターのエンジン音がした。
ブロロロロロロロロオオオオ………。
「うおおおおおおおおおおおおお……!」
同時に男の声。
見ると、矢広だった。
え?矢広?
「リャアあああ!」
矢広はスクーターから飛ぶ。
そしてアタシの蹴りから復活した雑魚くん達を、
蹴っ倒した。
無人のスクーターも人を轢いてる。
「なああにしてくれちゃってるのかなああ?
俺の大切な人にいい!」
三白眼に白い歯を見せ揉み手で言う、矢広。
「矢広、お前バイトじゃ……。何故ここに?」
「先輩ッ、大丈夫すか?
なんか、こっちから相沢先輩の匂いが……」
………。
「悪い、今の質問、ナシ」
ゾンビのように起き上がって来た、岩佐の手下達。
それを、野獣のような目付きでにらむ矢広。
コイツ、こんな顔してたっけ?
いつもの軽薄さはどこへやら、凶悪そのものだ。
パン、パンと、手をたたく矢広。
「はい、皆さん。全員、霊柩車に載って頂きます‼」
言うが早いか、順番に殴り始めた。
……その、殴り方だ。
普通、手加減して当たる位置とか、もう少し考える。
だが、矢広の殴りは迷いとか、相手に対する考慮のようなものが全くなかった。
仲原の言葉が脳裏にこだまする。
『……弱点?ないですね』
『相沢先輩の事になると人が変わるんだから』
アタシは青ざめた。
「矢広ッ‼やめろ!そんな殴り方したら……相手が」
相手が死ぬ。
あわてて駆け寄り腕をつかんで止めた。
「やめろ!もういいだろうが‼」
矢広は振り返ってアタシを見た。
心なしか目が虚ろだ。
「何で?コイツら悪いヤツでしょ?男が大勢で女一人襲うなんてあり得ないっしょ?非道とか、鬼畜とかそういう世界っしょ?成敗しないと」
「矢広、よく見ろ、アタシは無事だ。何ともないだろ?」
矢広はくりくりの、小動物みたいな目になった。
「腫れてる。ほっぺた、腫れてる」
「え」
そういえば、顔、殴らせたんだった。
「霊柩車、中止いたします」
「あ、あのな、矢広、これは……」
「切り刻んで、魚の餌アアアア!!!」
猛ダッシュ敵陣の矢広。
うあ、やめろ。話がややこしくなる。相手に重症負わせるな。アタシは焦った。そうだ、
「岩佐!とかいうヤツ!アンタの手下どもに逃げるように言って!」
矢広の目がギラリと光る。
「親玉はお前か?」
真っ直ぐ岩佐の方向へ歩いて行く。
岩佐の蹴りをかわし、殴りをかわし、
顔面を正面からストレートパンチ。
起動がほとんど無い。
なんだ?矢広の、この動きの以外性は?
「岩佐さんっ‼」
手下が動きを封じようとするのを、矢広は軽く払いのける。
岩佐が矢広の胸ぐらをつかんで頭突き。
矢広が頭突き返し。
そのまま倒れこんで、岩佐をタコ殴り。
後ろから組みついて来た手下くんを、投げた。
隙をつき、岩佐が矢広の首を絞め、
矢広が絞め返す。本気。
岩佐が気絶。
コイツも弱くは無いんだろうが、相手が悪い。
矢広は岩佐を踏んづけて、かかって来るヤツらを、順に殴り飛ばした。
アタシは近くに居たヤツの衿をつかんで、
「頼む‼誰かあの二人助けてくれ‼早く」
て、ゆーか殴りかかってる人数、多くない?
「さっき応援呼んだ。皆、血の気多くて」
「バカじゃない?被害者増やしてどーすんのよ!」
アタシの勘が正しければ、
この中に矢広に勝てるヤツはいない。
矢広は多分、ケンカに強い。そして、
ケンカしか知らない。
あっという間に、立ってるヤツはいなくなった。
うめき声があちこちから聞こえ、
死屍累々の地平である。
通報される前にズラかんないと。補導だ。
なんてこったい。
どちらが襲った方かわからない。
ゲホっと咳をして、岩佐が息を吹き返す。
「くそ‼相沢、公式戦に出てこい!公の場で勝負だ!」
お前らも早く帰れよ。
「この期に及んで……まだ何か言ってる。性別違うから無理だろ、それ」
「俺が女装してもいい。もう一度勝負……ゲホっ」
気持ち悪いだろ、どう考えても。
目の焦点が合ってくる矢広。
「はっっ‼配達っ!」
スクーターに駆け寄る。肩掛け鞄の中を見て、
「良かった、無事だ……。アッ、相沢先輩、送って行きます。後ろ、乗ってくだ……」
「ん?何?」
アタシが矢広の視線の先をたどると、
胸元のボタンが取れ、
ピンクのレースにバラの刺繍が見えていた。
「ずいぶんかわいらしい下着っすね。俺、勝手に先輩はスポーツタイプ派だと決めてかかって……ホゴっ!」
「見んなっ‼」
顔をアイアンクロウでガッツリつかむ。
「お前にゃあきれて、ものが言えんわ」
矢広は服も破れアザだらけだ。
この怪我で二人乗り?間違いなく職質だ。
ミルフィーユどころのハナシじゃない。
「ヘホっ、ホッゴゴ、ゴゴ。(えへ、しっかり見た)」
二枚目なセリフだが。
状況とそれを吐く人物像が情けなさすぎて、
「全然、胸キュンじゃない」
「おい、一応、脚押さえとけ」
岩佐の指示で後に居た二人が前にかがむ。
アタシは腹筋で脚を引き勢いをつけ、
一人はこめかみと、
もう一人はアゴを軽く蹴る。
「がはッ!」「ぐがっっ!」
二人が倒れるのを見て、
アタシの肩を支えている二人が慌てた。
「チッ」
岩佐が舌打ちして、アタシに迫り、
えり首に手をかける。
アタシの蹴りが岩佐の腹に入る。
襟からボタンがはじけ飛び、
岩佐が倒れ、
動揺の隙をつき、束縛をのがれ……、
地面に手を付き振り向く。
ブロロロロロロロロオオオオ………。
遠くから、スクーターのエンジン音がした。
ブロロロロロロロロオオオオ………。
「うおおおおおおおおおおおおお……!」
同時に男の声。
見ると、矢広だった。
え?矢広?
「リャアあああ!」
矢広はスクーターから飛ぶ。
そしてアタシの蹴りから復活した雑魚くん達を、
蹴っ倒した。
無人のスクーターも人を轢いてる。
「なああにしてくれちゃってるのかなああ?
俺の大切な人にいい!」
三白眼に白い歯を見せ揉み手で言う、矢広。
「矢広、お前バイトじゃ……。何故ここに?」
「先輩ッ、大丈夫すか?
なんか、こっちから相沢先輩の匂いが……」
………。
「悪い、今の質問、ナシ」
ゾンビのように起き上がって来た、岩佐の手下達。
それを、野獣のような目付きでにらむ矢広。
コイツ、こんな顔してたっけ?
いつもの軽薄さはどこへやら、凶悪そのものだ。
パン、パンと、手をたたく矢広。
「はい、皆さん。全員、霊柩車に載って頂きます‼」
言うが早いか、順番に殴り始めた。
……その、殴り方だ。
普通、手加減して当たる位置とか、もう少し考える。
だが、矢広の殴りは迷いとか、相手に対する考慮のようなものが全くなかった。
仲原の言葉が脳裏にこだまする。
『……弱点?ないですね』
『相沢先輩の事になると人が変わるんだから』
アタシは青ざめた。
「矢広ッ‼やめろ!そんな殴り方したら……相手が」
相手が死ぬ。
あわてて駆け寄り腕をつかんで止めた。
「やめろ!もういいだろうが‼」
矢広は振り返ってアタシを見た。
心なしか目が虚ろだ。
「何で?コイツら悪いヤツでしょ?男が大勢で女一人襲うなんてあり得ないっしょ?非道とか、鬼畜とかそういう世界っしょ?成敗しないと」
「矢広、よく見ろ、アタシは無事だ。何ともないだろ?」
矢広はくりくりの、小動物みたいな目になった。
「腫れてる。ほっぺた、腫れてる」
「え」
そういえば、顔、殴らせたんだった。
「霊柩車、中止いたします」
「あ、あのな、矢広、これは……」
「切り刻んで、魚の餌アアアア!!!」
猛ダッシュ敵陣の矢広。
うあ、やめろ。話がややこしくなる。相手に重症負わせるな。アタシは焦った。そうだ、
「岩佐!とかいうヤツ!アンタの手下どもに逃げるように言って!」
矢広の目がギラリと光る。
「親玉はお前か?」
真っ直ぐ岩佐の方向へ歩いて行く。
岩佐の蹴りをかわし、殴りをかわし、
顔面を正面からストレートパンチ。
起動がほとんど無い。
なんだ?矢広の、この動きの以外性は?
「岩佐さんっ‼」
手下が動きを封じようとするのを、矢広は軽く払いのける。
岩佐が矢広の胸ぐらをつかんで頭突き。
矢広が頭突き返し。
そのまま倒れこんで、岩佐をタコ殴り。
後ろから組みついて来た手下くんを、投げた。
隙をつき、岩佐が矢広の首を絞め、
矢広が絞め返す。本気。
岩佐が気絶。
コイツも弱くは無いんだろうが、相手が悪い。
矢広は岩佐を踏んづけて、かかって来るヤツらを、順に殴り飛ばした。
アタシは近くに居たヤツの衿をつかんで、
「頼む‼誰かあの二人助けてくれ‼早く」
て、ゆーか殴りかかってる人数、多くない?
「さっき応援呼んだ。皆、血の気多くて」
「バカじゃない?被害者増やしてどーすんのよ!」
アタシの勘が正しければ、
この中に矢広に勝てるヤツはいない。
矢広は多分、ケンカに強い。そして、
ケンカしか知らない。
あっという間に、立ってるヤツはいなくなった。
うめき声があちこちから聞こえ、
死屍累々の地平である。
通報される前にズラかんないと。補導だ。
なんてこったい。
どちらが襲った方かわからない。
ゲホっと咳をして、岩佐が息を吹き返す。
「くそ‼相沢、公式戦に出てこい!公の場で勝負だ!」
お前らも早く帰れよ。
「この期に及んで……まだ何か言ってる。性別違うから無理だろ、それ」
「俺が女装してもいい。もう一度勝負……ゲホっ」
気持ち悪いだろ、どう考えても。
目の焦点が合ってくる矢広。
「はっっ‼配達っ!」
スクーターに駆け寄る。肩掛け鞄の中を見て、
「良かった、無事だ……。アッ、相沢先輩、送って行きます。後ろ、乗ってくだ……」
「ん?何?」
アタシが矢広の視線の先をたどると、
胸元のボタンが取れ、
ピンクのレースにバラの刺繍が見えていた。
「ずいぶんかわいらしい下着っすね。俺、勝手に先輩はスポーツタイプ派だと決めてかかって……ホゴっ!」
「見んなっ‼」
顔をアイアンクロウでガッツリつかむ。
「お前にゃあきれて、ものが言えんわ」
矢広は服も破れアザだらけだ。
この怪我で二人乗り?間違いなく職質だ。
ミルフィーユどころのハナシじゃない。
「ヘホっ、ホッゴゴ、ゴゴ。(えへ、しっかり見た)」



