その時だった。
たくさんの人の中からひょっこり瀬野尾くんが顔を出した。そして、瀬野尾くんが私を見た。
ほんの一瞬だったけれど、確かに私たちは目があった。
そして瀬野尾くんは、私に何か言っているように見えた。
え、なに……!
もう一度よく見る。
しかし…………瀬野尾くんはまた人混みに埋もれ、その姿はもう見えなくなっていた。
あ…………
しばらく人混みに目を向けていたけれど、いっこうに瀬野尾くんの姿は見えなかった。
あまりいつまでも見ているのが恥ずかしくなった私は、気持ちを振り切り、学校を後にした。
最後に瀬野尾くんを見ることが出来て、本当に良かった……
良かった……
良かった……
私は涙で顔がぐちゃぐちゃになっていた。

