あれっ?




見覚えのある髪型……




……瀬野尾くん?





向かい側から歩いてくるのは、紛れもなく瀬野尾くんだ。




よく見ると瀬野尾くんの隣には、モデルのように綺麗な大人の女性。彼女は幸せそうに微笑み、その腕をしっかりと瀬野尾くんの腕に絡めている。







…………あ







そして、その女性の胸には、私が瀬野尾くんに頼まれ瀬野尾くんの為に、つけて見せたあの派手なネックレスがあった。





…………





…………あ、あの人が










よくよく思えば10年も一緒にいて、こうして瀬野尾くんの彼女を見るのは初めてだった。





瀬野尾くんが彼女を紹介してくれることもなければ
私から会わせて欲しいと言ったこともなかった。






瀬野尾くんの彼女かぁ…………






なんだか私は夢を見ているような気持ちだった





ふぅ~ん
ああいう派手目の大人の女性が好きなのね





ふぅ~ん
本当に彼女がいたんだね






瀬野尾くんに彼女がいることは知っていた。






知っていたけど






それは、あくまで知っていただけで……






見たことは無かった






もちろん、いつかは瀬野尾くんの彼女を目にするとは思っていたよ。





だって、それは当たり前のことで、私にとっては、どうってことないことで。というか、それは喜ばしいことで…………。





だから私は友達として立派に
「こんにちは」って
笑顔であいさつするべきで…………






頭ではわかっていた。こういう日の事は、何度もシミュレーションしてきた。だからこんな場面、普通にやってのけられると思っていた。