その瞳は、嘘をつけない。

「よし、いいぞー。次はこいつだ。」
「え!?ケーキは?」
「せっかくここまでやったんだ。もう少し続けろよ。」
「(鬼ー!!)」

渡されたのは、ゴロンとした小ぶりのボウリングの玉みたいなのに、持ち手が一つ。
「お。重っ!!!なんですかこれ!?」
「ケトルベルだ。落とすなよ。」
よく見ると10kgと書いてある。道理で思いはずだ。
これを前後にぶんぶん振り回すらしい。
これもまた、とにかく、キツイ。
「いつもこんなことやってるんですかー?」
「いや、これはウォームアップ用。普段はこっちだ。」
そう言って一之瀬さんが取り出したケトルベルは16kg。
いや、そういう問題じゃないんだけど。

言われた数をこなすのに必死で、頭の中はもう数字と、この後待っているであろうケーキだけ。

「49・・・50。はい、いいぞ、お疲れさん。」
「くはー疲れたー。」

ケトルベルをそうっと床に置き、ぺたんと座り込む。
「ほれ。」
水が入ったペットボトルを渡してくれた。
「ありがとう、ございます。」
水が喉を通ってお腹に落ちていくのが分かるようだ。
身体がこんなにも水分を求めるほど動いたのは、いつ以来だろう。

でも身体は乾いているのに、心は満たされている