その瞳は、嘘をつけない。

「実加?そろそろ済みそうか?」

居心地の悪いムードを破ったのは、一之瀬さんだった。
「はい、もう終わりました。」
弾かれたように振り返り、自然に笑顔になる。
さっき2人に見せたようなぎこちない笑顔とは全然違うと、自分でもわかる。

もう一度2人に振り返り、
「じゃあ、お幸せに!」
そう言って立ち去ろうとすると
「実加!」
耕平に呼び止められた。
無視しようとしたけど、出来なかった。
7年半も付き合っていた相手だ。
何をされても、完全に嫌うことは、できない。

「あのさ。こんなこと言える立場じゃないのはわかってるけど。
でも、幸せを祈ってるよ。」
「ありがとう。耕平と美咲さんもね。」

そう伝えて、私は一之瀬さんの腕を取って歩き出す。
こんな関係じゃないのは十分分かってるけど。
2人に対する、私の意地。
一之瀬さんも、察してくれているようで自然にこの意地に付き合ってくれている。

「元カレか?」
「そうです。
ありがとうございました、恋人の振りしてくれて。」
「どういたしまして。それにしても、新しい彼女の名前まで知ってたんだな。知り合いか?」
「全然。でも、あの人すごく律儀というか。
別れて欲しいって言われた時に全部説明してくれたんです。内定先の病院で看護師をやっている美咲さんて子のことを好きになっちゃった。まだ両想いかわからないけど、こんな中途半端な気持ちで私とは続けられないって。」
「そりゃずいぶんだな。で、さっきのがその看護師?」
「だと思うんですけど・・・。もしかしたら違うのかも。でも私、美咲さんって呼んじゃったし。
もし違ったとしたら、今頃あっちは修羅場かな?」
「おいおい。」