その瞳は、嘘をつけない。

購入を決めて、会計に向かおうと歩いていた時に本棚の影から聞こえてきた声。
聞き覚えのある、この声。

「こんなのはどうだ?イラストもカラーで見やすそうだぞ。」
「あら本当!かわいい。」

幸せそうに密着して、一冊の本をのぞき込んでいるカップル。
彼氏の方は、そう。
間違いなく、耕平。

あまりにも突然で、ショック状態に陥ってしまった。
ここにいちゃだめだ、見つかる前に早く立ち去らないと。

そう思い足を進めようとする私より先に、
耕平がふと本から視線を上げてしまい。

最悪なことに、目が合ってしまった。

「実加・・・・・」

無視してくれれば良かったのに。
そのまま目を逸らしてくれれば、私も無視してその場を去れたのに。
名前を呼ばれ、魔法でもかけられたかのように動けなくなってしまった。

「えっ・・・。」
そう自然と声を漏らしたのは、私ではなく耕平の隣にいた彼女。
多分、美咲さん。

耕平から名前だけは聞いていた。
そしてあの反応を見ると、美咲さんも私のこと、少なくとも私の名前は知っていたんだろう。

自然と向き合う形になってしまった私たち。
そしてその時見えてしまった、美咲さんが腕に抱えている本のタイトル。

’初めての、妊娠・出産’