川島さんと秘書課に戻り、コーヒーを淹れた私は取締役室へUターンした。

フリー?

うーん…………彼女はいるだろう。

あのルックスでスタイルも抜群。ハルナの取締役で御曹司、仕事も出来るし、お金もありそう。

いない訳がない。

ってか、女が放っておかないと思う。


「ん?」

「えっ?」


取締役の事を考えていた私の目の前には…………


「あっ、すみません。」


不思議そうに私を見る榛名取締役がいた。

いつもの行動に体だけは動いていて、頭の中は他所へ行ってしまっていたのだ。

取締役室のデスクの前で立ち尽くす私を不思議そうに見上げる目と合う。


「ん?何か言わなかった?」

「えっ?いえ、何も!」


慌ててコーヒーをデスクの端に置いた。


「クスッ、珍しいね。」

「あっ、すみません。後ほど、会議の資料をお届けします。」

「宜しく。」

「はい、失礼します。」


アタフタする私をクスクスと笑う声が背後から聞こえていたが急いで取締役室を出ようと扉に手を掛けた。