目が合った専務が慌てた感じで口を開いた。


「斉藤さん、突然すみません。近くまで仕事の用で来てたもので。」

「いえ、どうかされましたか?」

「金曜に父から話を聞きました。」


ビンゴ。

やっぱり食事の件だろう。


「あのー、無理に誘って頂かなくても大丈夫ですから。」

「いえ、私がどうしてもと…………。」


ふと専務の視線が私の背後に向けられる。

ロビーで話す私と専務をチラチラと通る人達が見ているようだ。


「あのー、ランチでも行きませんか?」

「えっ?」


腕時計を確認すれば、確かに昼休みの時間になろうとしている。


「ここでは人目が…………。」

「…………そうですね。」


確かに人目が気になる。

大した会話ではないが、凄く見られているみたいだ。


「斉藤さん、行きましょう。」

「あっ、でも何も…………。」

「受付に伝えてきます。」


意外と強引な人なんだ。

呆気に取られる私は専務の後ろ姿を見つめるしかなかった。