「悠菜、何?」

「綺麗にしてるね。彼女が片付けてくれてるの?」

「いねーよ。」

「ふーん、意外。」


剛がコーヒーを淹れてくれようとしている。


「剛、洗面所を貸して?」

「リビングを出たら扉があるから。」

「ありがとう。」


洗面台に映る自分に溜め息を吐いた。

メイクをしたまま寝てしまったようだ。


「あー、肌が…………。」

「メイク落としはないからな。」

「女とか連れ込んでそうなのにね。」

「本気の女以外は部屋にいれない。」

「ふーん、いないの?剛、洗顔でいいから貸してくれない?」

「俺の使ってるヤツなら…………ほら。」


渡された洗顔でサッパリと洗い流す。

鏡の中で剛の目と合う。


「あんまり見ないで。」

「別に気にしない。ほら、タオル。」

「ありがとう。」


いつものイジワルな口調だけど、何かと貸してくれて優しい。


「ほら、新品の歯ブラシ。」

「いや、さすがに悪いよ。」

「気にすんな。ほら、歯ぐらいは磨け。」

「あっ、うん、ありがとう。」


優しい剛に調子が狂ってしまいそうになる。