お酒で饒舌になっていく。


「取締役は女性社員の憧れなんですよ。こうやって隣で仕事が出来るだけで幸せなんです。」

「そんな存在は寂しいだけなんだけど?」


うーん、そうかな?

私も含めて、誰もが取締役とは付き合いたいとは思ってるのかもしれない。

それに取締役なら女性には不自由してないだろう。

一人で黙々と脳内で考え事をしながら、手は美味しいカクテルを口に運んでいた。


「悠菜、飲み過ぎ。もう帰るぞ。」

「あっ、うん。」


とうとう剛にカクテルグラスを取り上げられ、そのまま剛の口へとカクテルが消えていく。

テーブルに置かれたグラスをじっと見つめていれば……腕を引かれた。


「兄貴、コイツを送ってくる。」

「俺も行く。」

「いや、兄貴も疲れてるだろうし、俺も送ったらマンションに帰るから。」

「変な真似はするなよ、剛。」

「する訳ないだろ。」


こんな会話をする2人に、思わずフフッと笑いが込み上げてしまった。