「考えといてくれる?悠菜。」

「えっ?」


悠菜?

取締役が私を名前で呼び捨て?

目が点になる私に…クスリと口元を緩めた取締役と剛が重なる。


「少し上のバーで飲まない?」

「えっ、あっ、はい。」


挙動不審な私を嘲笑っているのは間違いなく剛だろう。


「くくっ、俺も便乗する。兄貴、いいだろう?」

「ああ。悠菜も大丈夫?」

「あっ、はい。」


大きく頷いた。

3人でホテルの上階にあるバーへと向かい、大人の雰囲気漂う店で飲み始めた。

美味しいお酒に、私の気分も背伸びしてしまい、アルコールの強いカクテルを飲み過ぎてしまっていた。


「おい、大丈夫か?」

「平気。剛は知ってるでしょ?潰れたりしないから。」

「ふーん、ならいいけど。」


隣の剛から目の前に座る取締役に顔を向けた。

女性社員の憧れと飲めるなんて贅沢だ。


「ふふっ、取締役と飲めるなんて贅沢。」

「誘ってくれたら付き合うよ?」

「いやいや、私なんか手も届かない人ですよ。誘う勇気なんてありません。」