ん?んんん?
帰国延期?
副社長命令だとぉ?

「か、神田部長。あのっ!」
「うん、うん、ありがとねー。頼んだよー。彼ドイツ語は得意なんだけど、イタリア語はどの程度のものなのか僕は知らないんだ。よろしく。じゃあまた本社でねー」

一方的に電話を切られてしまった。

おいこら、タヌキ、人の話も聞けっ。
私はスマホを睨みつけ、ため息をついた。
誰が来るのか聞いてない。
そして私の帰国がいつになるのかも聞いてない。
どーいう事よ。

はああーっと声に出そうなほど大きく息を吐いた。

これか。
これが早希の言ってたタヌキのやり方か。
全くよその部署の社員もこき使うとは。
いや、命令したのは副社長か。

うぬぬぬ。
出張が伸びたことは仕方ない。げに厳しきは宮仕えなり・・・なのだ。
しかし、またもや副社長か。関わり合いたくないと思えば思うほど関りが出るものらしい。
ここに来て初めてゆったりとした気持ちでとった朝食だったけど、気分は下向きになりがっくりとうなだれた。