「ユイコー!」
オーバーリアクションで抱きつくのはやめて欲しい。ホントにまじで。
会場に入った途端にハグされて頬にキスの雨。
彼こそが世界的に有名なイタリア企業アンドレテ社の御曹司のエディージオ。
35才、独身おまけにかなりのイケメン。
程よく肩幅があり足が長くて抜群のスタイル。彼ほどタキシードが似合う男を見たことはない。
仕事はデキるし、社交的で御曹司だからといって偉そうでもないし気分にムラもない。
女性に好かれる要素しかない。
そこはかなり評価しているけれど、私にとってはただそれだけのこと。
彼は友人としては最良だけど、この人と恋愛関係になることなど欠片も考えられない。
「エディー、やりすぎ」
やんわりと彼の胸を押した。
「僕のデートの誘いを断り続けるユイコが悪い。何度誘っても断ってくるのは世界中でユイコだけだよ」
「あら、何を言ってるの。
エディーが来日してから昨日は女優の凛子とデート、その前はパリコレモデルのなんとかちゃん、ええーっとその前が女子高生モデルのあきえ?なつみ?はるこ?何だかわからないけど季節感がある名前の子で・・・まだあったわよね。そうそう、外務大臣の娘ともデートしてたんじゃなかったかしら?
で、来日した時に空港で出迎えたのは日本の財閥系企業のご令嬢だったんだっけ?
ね、エディー、あなたのここ数日の女性関係、ここまでこれで合ってる?これのどこに私の入る隙が?」
エディーの頬がひくつくのを確認した。
そう、このオトコの女性関係、これがかなり曲者なのだ。
私の男性関係の噂など可愛いものだ。
実際、私の交遊関係など合コンをした、会食をした程度のもので明らかにエディーのものとは質も規模も違う。



