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いくら会社の担当を外れたとはいえ、これからイタリアの市場に打って出ようとしているのにそのイタリアの有力企業からのパーティーの誘いを断るわけにはいかない。
そんなの当たり前。

だからなんだろうな。
エディージオはそれもわかってて会社宛てにパーティの招待状を送ったんだろう。
ああ、こんなことなら彼からのランチのお誘いをOKしておけばよかった。

昨日、そのエディージオから電話があってなぜかスーツ姿で来ないように念押しされた。

仕事なんだからスーツで行くと言うと、「キミのところの社長とはビジネスだけど、ユイコは僕の友人として招待したんだからビジネスじゃない」と言い張った。

おまけに「もし、スーツで来たらその場で拉致して無理やりドレスに着替えさせるから」と物騒なことを笑いながら告げたのだ。
彼なら本当にやりかねない。

何度目かわからないため息をつきながらタクシーを降りた。

都内でいや、国内外で有名な超高級ホテル。
周りは長ーいリムジンや高級車のハイヤー、超高級外車ばかり。
普通のタクシーで来たのが申し訳なくなるくらいの居心地の悪さを感じる。

タクシーの運転手さんも「今夜はここで一体何があるんですか」と声を震わせたほどだ。

「イタリアの王様のパーティーなんですよ」と冗談を言ったけれど運転手さんは「へぇえ」と納得するように何度も頷いていた。まずい、冗談ってわからなかったのかも。

実際は第二次世界大戦後に王制は廃止されて現在イタリアに王様はいないんだ。
でも、アンドレテ社はイタリア国内屈指の巨大企業で経済界の王様のようなもの。

そこのパーティーとは・・・全く持って気が重い。