「いえ、あの、すみません、実はあなたのことは早希さんのご友人だと早希さんから聞いていたものですから。私は図々しくも勝手に自分の知り合い感覚でいろいろすっ飛ばして話しかけてしまって」
サイボーグ林のいきなりの砕けた口調と困ったような笑顔まで見せてくれたのだから、驚きすぎてひっくり返りそうになった。
しかも早希を”谷口さん”ではなく”早希さん”と呼んでいる。社内で早希さんと呼ぶのは同じ名字の人物がいるあの部署内でのみだったと記憶している。
それにこの人、サイボーグって噂されてるくらい無表情だって聞いてたし、さっきまで確かにサイボーグみたいな顔してたけど?
「--ええっと、いいえ。私も噂なんてあてにならないものだと今再認識しました。それで、早希から私のことを何か聞いているんですか?」
「はい、少しだけですが。あなたは人脈を広げて仕事に結びつけるプロだと。会社も佐本さんを正しく評価して使わないとそのうち独立して会社を作りその人脈を駆使してここの顧客を根こそぎ取られることになると脅されましたよ」
困ったように笑うサイボーグに私もくすっと笑ってしまう。
「そんな大それたことは考えてないし、私にはそんな力もありませんよ」
「でも佐本さん、今の職場環境はどうですか?何か問題があればいつでも話を聞きますからね。もちろん公式でもオフレコでも」
サイボーグはどうやら人間だったらしい。「顧客を根こそぎってのはさすがに困るんですよね」と笑った。
「では、一つだけ」
すっかり打ち解けた雰囲気になり、私も林さんにお願いすることにした。
「今後、異動になる際にはできれば副社長管轄の部署ではないところにして下さい」
「それって」
「ここだけの話、親友を泣かしたくそ野郎の顔なんてたとえ副社長でも見たくないんですよね」
私のひそひそ話に一瞬驚いた顔をした後、林さんはくっと笑った。
「ああ、確かにあれはくそ野郎かもしれません。これ以上はちょっと言えませんけど、佐本さんのお気持ちはわかります」
席を立つときに「でも、彼もかなり反省もして憔悴していますから、長い目で見ていただけるとありがたい」と小声で言って去って行った。
そうなのかもしれないけれど、今はまだ許す気には到底なれない。
サイボーグ林のいきなりの砕けた口調と困ったような笑顔まで見せてくれたのだから、驚きすぎてひっくり返りそうになった。
しかも早希を”谷口さん”ではなく”早希さん”と呼んでいる。社内で早希さんと呼ぶのは同じ名字の人物がいるあの部署内でのみだったと記憶している。
それにこの人、サイボーグって噂されてるくらい無表情だって聞いてたし、さっきまで確かにサイボーグみたいな顔してたけど?
「--ええっと、いいえ。私も噂なんてあてにならないものだと今再認識しました。それで、早希から私のことを何か聞いているんですか?」
「はい、少しだけですが。あなたは人脈を広げて仕事に結びつけるプロだと。会社も佐本さんを正しく評価して使わないとそのうち独立して会社を作りその人脈を駆使してここの顧客を根こそぎ取られることになると脅されましたよ」
困ったように笑うサイボーグに私もくすっと笑ってしまう。
「そんな大それたことは考えてないし、私にはそんな力もありませんよ」
「でも佐本さん、今の職場環境はどうですか?何か問題があればいつでも話を聞きますからね。もちろん公式でもオフレコでも」
サイボーグはどうやら人間だったらしい。「顧客を根こそぎってのはさすがに困るんですよね」と笑った。
「では、一つだけ」
すっかり打ち解けた雰囲気になり、私も林さんにお願いすることにした。
「今後、異動になる際にはできれば副社長管轄の部署ではないところにして下さい」
「それって」
「ここだけの話、親友を泣かしたくそ野郎の顔なんてたとえ副社長でも見たくないんですよね」
私のひそひそ話に一瞬驚いた顔をした後、林さんはくっと笑った。
「ああ、確かにあれはくそ野郎かもしれません。これ以上はちょっと言えませんけど、佐本さんのお気持ちはわかります」
席を立つときに「でも、彼もかなり反省もして憔悴していますから、長い目で見ていただけるとありがたい」と小声で言って去って行った。
そうなのかもしれないけれど、今はまだ許す気には到底なれない。



