「謝罪は後日ってことでーーじゃあ、あとよろしく」

はああ?
早希はちらりと高橋に視線を送った後で副社長に差し出された腕に自分の腕を絡ませると、私にひらひらと右手を振った。

「じゃあ、佐本さん、良樹またな」
そういう副社長の右手には何故か早希の旅行バッグが。

ちょっと待って。
「早希、どこにっ・・・」
早希の腕をつかもうとして伸ばした右手を横から高橋につかまれる。

何で邪魔するのと恨みがましい目を向けると、
「早希はこの山の向こうにある彼女お気に入りのホテルに連れて行くから」
と副社長が勝ち誇った顔で言いだした。

「なっ・・・」
なんだとぉ。今日は私と早希の旅行のはずだ。

ぎっと副社長を睨むと、
「その代わり、良樹を置いていくから佐本さんが好きに扱うといいよ」
私の腕をつかんでいる高橋の顔と私の顔を見比べながらニヤリと笑われて更に気分が悪い。

「あー、もう由衣子をからかわないでくださいよ、康史さん。コイツ谷口のことになると冷静じゃなくなるんだから」

高橋が面倒くさそうに頭を左右に振る。

この状況が理解できないけれど、ただ、何故初めから副社長や高橋が来ることを教えてもらえなかったのか納得いかない。

「俺たちもう時間がないから行くな」
「由衣子、また週明けにご飯食べに行こう」

ラブラブな二人はべたべたとくっついてさっさと出て行ってしまった。

「ちょ、ちょっと!」
後を追おうにも私は高橋につかまれていて動けない。

「説明して」
私は口を尖らせ上目遣いで真横に立つ久しぶりに会った自分の彼氏を睨んだ。