「じゃ、今夜は早希のおごりで。それで勘弁してあげるけど、本当に副社長のこと信用していいんだよね?」

「うん。いろいろ誤解があった。きちんと話をして今はもう大丈夫。それに、もう離れていられないってくらい大好き」
頬を染めながらのろける親友の姿を目の前にしてもう言うことはない。

「今夜は思いっきり飲み食いさせてもらう」
ウィンクしてビールのおかわりを頼んだ。

「高橋は向こうで毎日忙しくしてたよ。仕事ができる男は大変だね。由衣子もそうだけど。アイツ毎日由衣子の話をするんだもん。鬱陶しいくらい」

早希は楽しそうに笑った。

「私の話って何よ」
「由衣子がかわいくて仕方ないって」

「な、な、何言ってんの。そんなこと言うわけないじゃない」
「あら、由衣子、顔真っ赤。ふふふ」

からかう早希をひと睨みして、彼女の好きな真鯛のカルパッチョをお箸でまとめてすくい取り一気に食べてやった。

「あ、私の真鯛がっ」

知らんぷりをして湯葉巻きクリームチーズのお皿にてを伸ばそうとするとタッチの差で早希に奪われてしまう。

「おっと、セーフ」

お皿を高々と持ち上げて私から守ると
「由衣子の話ばかりしてたのはホントだよ。
イタリアでワインの味を覚えてしまったから、自分と離れている間に由衣子がひとりで飲み過ぎないように見張って欲しいって言ってた。
あ、あと、エディーに手を出されないように気を付けて欲しいってさ」
ニヤニヤしながら何杯目かのジョッキを口にする。

今までそんなこと言われたことなかったのに。
私の身体が熱いのはビールのせいじゃないと思う。