帰宅しても夕食を作る気にも食べる気にもならず、ヨーグルトを口に入れてみたけれど味もわからない。


早希に何があったのか、
私が決着をつけるために早希に副社長と話をしろなどと言わなければこんなことにならなかったんじゃないか。
そんなことが頭の中をぐるぐる回る。

私は間違った。

そう、私は間違えたアドバイスをしてしまったのだ。

早希の実家に連絡をしたくても、住所も電話番号も知らない。
東京から新幹線で1時間ちょっとの地方都市出身ってことと先週お母さんが椎間板ヘルニアの手術をしたってことだけしか知らない。

実家に帰った可能性が一番高いけれど、その実家がわからない。
もしかしたら、私は大切な親友を失ってしまったのかもしれない。

背筋が凍り付くような感覚に硬直し、目の前が闇でおおわれるような恐怖に身体が震える。
家族よりも大事な親友を手放してしまったのだろうか。
早希は副社長だけでなく私をも捨ててしまったのだろうか。

「どうしよう」
ひとりごとが一人暮らしの部屋に寂しく響く。

そんな時だった。
スマホが震えた。画面を見てても震えだした。
待ちに待った早希からの連絡だ。

「早希っ!」
悲鳴に似た声が私の口から飛び出した。

「ごめん。しばらく連絡できない。ーーー心配しないでね、落ち着いたら必ず連絡するから。・・・由衣子、本当にごめん」

それだけで電話はぷつっと切れてしまった。

一方的な早希の言葉が私の心にナイフのように突き刺さる。

私はスマホを握りしめて呆然としていたーーー嘘でしょ。

しばらく電話できない?
落ち着いたら連絡するって一体いつのこと?
ごめんねって謝るほど私と連絡しないつもりなの?

目の前が真っ暗になり息苦しさと怒りで身体が震えだしていた。



ーーー私は私から親友を取り上げたあのオトコ以上に彼女にそんな行動をとらせるきっかけを作ってしまった自分が大っ嫌いだ。