私としてはその方が楽だというのが言いたかったのに、首藤さんはますます渋い表情をして。


「そうやって社長に特別なことをしてたらマズいんじゃないですか?」


首藤さんは一歩詰め寄り、私は思わず後ろに下がった。


「社長はオフィスの女性達にモテてます。誰もが彼の為に弁当を作りたいと思ってるかもしれません。
なのに、秘書という立場を利用して、三橋さんが周りに内緒でそれをしている。

それは女子達からしたら頭に来るところじゃないですか?只でさえ社長と二人きりで仕事して、周囲から羨ましがられているのに」


イライラとしながら話す首藤さんの目は鋭くて、羨ましがってるのは誰よりも貴方じゃないんですか!?とは口が裂けても言い出せるような状況でもなくて。


(この人、ヤバい)


咄嗟に過去のことが思い浮かんで、ぶるっと寒気が起きそうになる。
だけど、それを見せると相手に付け入る隙を与えそうな気もして、何とかぎゅっと手を握って我慢した。


「……そ、そうですね」


頭の中に紫苑の顔が浮かんで、こういう時に助けに来て欲しい…と思ってしまったけど。