「食後でしょ。何か奢りますよ」


自分が呼び止めたんだし…と言う首藤さんに、当然遠慮したが聞いても貰えず。


「コーヒーでいいですか?」


財布の中から小銭を出して入れてしまい、仕様がない風に私も「はい…」と返事する。


「三橋さんはブラック?それとも微糖?」


本当はベタ甘なカフェオレが飲みたい気分だったんだが、取り敢えずは場繋ぎのように「微糖で」と答えた。


首藤さんは頷いて微糖のボタンを押し、取り出し口に落ちてきた焦げ茶色の缶を拾い上げる。


「はい、どうぞ」


目の前に出される缶を見て、「すみません」と会釈をして受け取った。
首藤さんは自分の分のコーヒー缶を買い求めるとすぐにプルトップを押し開け、それを一気に飲み干すように上を向いた。


その様子をじっと見てるのもどうかあると思い、自分の缶も上下に軽く振ってみる。



「……さっき、社長室に行ったらですね」


コーヒーを飲み干したらしい首藤さんが、缶を唇から離して言いだした。


「社長が弁当を食べてました」


三橋さんが作った…という声を聞き、(ああ、バレたのか…)と思った。