幼馴染みと、恋とか愛とか

こっちはその言葉に「まあな」と答え、オフィスに置いてきた萌音は今頃どうしているだろうか…と思った。


「珍しいですね。社長が笑うなんて」


ちらっと視線を走らせる首藤は俺の表情を見て口角を上げる。
俺もそんな首藤を確かめ、惚けるように「そうか?」と聞いた。


「そうですよ。なかなか思い出し笑いなんてしないでしょ」


自分よりも二つ年下の首藤が指摘する。
愛想笑いなら幾らでも見かけますが…と付け加え、俺は感心した様に「よく見てるな」と答えた。


「ええまあ。それなりに長い付き合いですから」


まだ起業せずにいた頃、首藤とは同じオフィスで働いていた。
SE(システムエンジニア)として駆け出しの頃から面倒を見てきた手前もあり、起業した際に「一緒にやらないか」と声をかけたんだ。


「社長の機嫌がいいのは、あれの所為ですか?」


首藤はハンドルを握ったまま振り返り、こっちは「あれ?」と訊き返す。


「秘書ですよ、秘書。何でも女性秘書を雇い入れたとか」


総務で話題になってました…と伝え、「美人なんでしょ?」と加えてくる。


「美人?」