どの方も有名企業で働いてた方みたいで、顔が広いんだなぁ…と凄く感心させられてしまいます」


彼女は私もそんな者の一人だろうと思っているらしく、どちらでお勤めでしたか?と聞いてきた。


「私は…」


さて困った。
有名企業に派遣されたこともないし。

頭の中で一瞬迷い、ここで見栄を張ったところでどうしようもない…と切り替える。


「私はその…し…社長とは派遣先での知り合いと言いますか、ちょっとした顔見知りで…」


と言うか、生まれた頃からの顔馴染みなんですけどね。


幼馴染みとは言えないしなぁ…と天井を仰ぎ見ると、柴原さんは「そうなんですね」と納得をした。


(あっさり信じないでよ〜)


笑って誤魔化しながら、派遣で働いてたけど契約の更新が切れて困っていたんだと教えた。


「年齢も年齢だし、正規採用は難しいと言われたから」


職安で…と話すと、人事担当者としては大いに納得がいくらしく。


「そうですね、事務職は大抵二十五歳くらいまでの若い社員しか雇いませんから」