幼馴染みと、恋とか愛とか

参ったなぁ…と声を漏らしながら首の後ろに手をやり、軽く上下させた後で近寄ってくる。

俺はその彼を見て背中を仰け反らせ、何だ一体…と身を構えた。


「……なぁ蓮也、俺は頼みがあるんだけど」


こそっと耳打ちする様な距離にまで来た彼は、そう言って俺を窺う。
こっちは相手がオフィスの社長だと思うと断ることも出来ず、緊張したままで「何ですか?」と問い返した。


「悪いんだが、此処で俺と会ったことは家に帰っても内緒にしておいて欲しい。
近所の連中にバレるとマズいんだ。あれこれと詮索をされて、噂のタネにもされたくない」


面倒くせーから、と囁く姿は昔のままで、俺はつい可笑しくなってしまった。


「いいですよ。誰にも話しません」


握り拳を口元に持っていきながら了解すると、紫苑さんは安心した様に微笑んだ。


「頼むな。その代わり、悪い様にはしないから」


そう言うと、ポンと肩を叩いて去っていく。

同じ階にある社長室というプレートが掲げられた部屋のドアを開けて入室する姿を見つめ、その言葉の意味を考えていた。