三軒先に住む幼馴染みのお兄さんは、俺にとって『遠い親戚の従兄弟』くらいの感覚だった。

彼とは年齢も十歳離れてるし、物心ついた時には相手はもう高校生くらいになってて、小さい頃は行き来し合っていたお互いの家を訪問もすることなく生活してるようになっていたから。


……だから、あの時は凄く驚いたんだ。
幾つものオフィスが入る複合ビルの一室で、彼と対面した時は__

____________________


簡素な設えの会議室に集められた俺達は、多忙を極める社長の入室を待っていた。

自分と同じインターンシップに参加してきた学生達が集まる室内に入ってきた社長は、俺達の前に置かれたデスクに着くと、真っ直ぐ前を向いて挨拶をした。


「学生の皆さん、初めまして。私はこの『CONシステムサービス株式会社』の代表取締役を務めております。伊川紫苑と申します」


ビシッと高そうなスーツに身を包んだ人は、ニッコリ笑っている。

切れ長の眼差しを下げて微笑む相手を見つめ、俺の隣に座っている女子が、ほぅっ…と小さな溜息を漏らした。