「明日デートしないか?」


夕食のカレーを食べながら紫苑が口にした。
思わずスプーンを落としそうになるほど驚き、声も出せずに様子を窺う。

紫苑は少し照れたような顔をしていて、スプーンをカレーの中に突き刺すような感じで立ててた。


「俺も萌音とデートとか、まるで考えたことなかったんだけど、こうして二人で暮らすことにもなったし、お互いを知る為にも丁度いいかな…と思うんだけど」


どうだ?と訊かれて「どうって言われても…」と考え込む。

紫苑と二人だけで暮らすのも不安なのに、この上二人だけでデート?


(ないない。そんなのやっぱりない)


「しお…」

「何も返事がないなら予定もないな。何処行こうか」


いや、私の返事はノーなんだってば!


頭の中でそう言っても、目の前にいる紫苑は何だか嬉しそうに口元をカーブしてる。

そんな顔を見せられたら不安だから行きたくないとも言い出せず、仕様がなさそうに小さく息をこぼして話を合わせた。


話し合った結果、無難にドライブへ行くことになり、それなら帰りは外食にしない?と提案したんだが。